先月、調律にお伺いしているピアニストのルイ・レーリンク先生の生徒さんのリサイタルの調律をさせていただきました。
会場は、早稲田にある教会のスコットホールというところで、ピアノはベヒシュタインのA型STUDIO189でした。事前に、演奏される生徒さんとご連絡をとって、音についてのイメージをお聞きしました。
「華やかな音よりは、柔らかくてやさしくて深みがあって、慈愛のあるような感じ。どーんと深みのあるベースと極上のピアニッシモが出せたら。」
自分がルイ先生のご自宅のピアノを調律するときの音に近いイメージと感じました。
当日、ご本人とピアノを確認すると、少々音色にばらつきがあり、固い音もいくつかありました。調律後、とても弾きやすくなったと喜んでいただきました。また、聴きにいらしていたルイ先生ご夫妻も、ベヒシュタインらしい音で、演奏も良かったとおっしゃっていました。
後日、生徒さんから「とても気持ちよく演奏することができました。ホールの雰囲気にもぴったり合っていたと思います。」とメールをいただきました。
自分の思いを伝えることは、難しいです。お互い同じ感性のフィールドに立っていないと、また相手がそのスイッチに入っていないと、いくら話しても伝わりません。
特に音は目に見えませんので、イメージを伝えることが難しいです。抽象的な表現が多く、数値で表すことは困難です。しかし、言葉で伝えられる音のイメージ以外に、普段の会話などから、その方の感性を読み取り、相手のイメージを自分なりに解釈し、音創りができれば、ご希望に応えられると思います。
演奏者・ピアノ・ホール等の環境が毎回違いますので、その時の響きを大切に、ピアノの特徴を最大限引き出せるような音創りを心がけています。